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紙や段ボール、ティッシュなどを製造する製紙工場では、排水処理の過程で「製紙汚泥」が発生します。製紙汚泥は発生量が多く、水分や有機物、鉱物成分などを含むため、適切な処理方法を選ぶことが重要です。
製紙業界では、汚泥を工場内のボイラーで燃料として利用したり、焼却後に残る灰をセメント原料に活用したりする取り組みが行われています。こうした方法に加え、肥料化など、汚泥の性状に応じた資源化も選択肢になります。
この記事では、製紙汚泥の特徴や代表的な処理方法、PS灰の活用先、肥料化を含めた資源化の考え方を解説します。
製紙汚泥とは、紙やパルプの製造工程で発生する排水を処理する際に生じる泥状の廃棄物です。製紙工場では、原料の処理や紙の製造に水を使用するため、排水に含まれる繊維や微細な固形物などを取り除く過程で汚泥が発生します。
製紙汚泥は、廃棄物処理法上の産業廃棄物のうち「汚泥」に該当します。業界では「製紙スラッジ」や「ペーパースラッジ(PS)」とも呼ばれ、製紙工場で発生する廃棄物の中でも重要な処理対象のひとつです。
製紙汚泥には、紙の原料に由来する繊維や、炭酸カルシウムなどの鉱物系の填料、排水処理に関わる微生物由来の成分などが含まれます。含まれる成分や割合は、使用する原料や製造工程、排水処理の方法によって異なります。
また、製紙汚泥は水分を多く含むため、そのままでは運搬や処理にかかる負担が大きくなりがちです。処理方法を選ぶ際は、含水率や有機物・無機物の割合を把握し、脱水や乾燥による減量効果も含めて検討する必要があります。
有機物を多く含む汚泥は燃料化や堆肥化などを検討できますが、鉱物成分の割合が高い場合は、燃料としての利用や肥料化に適さないこともあります。工場ごとの性状を確認したうえで、処理方法を選ぶことが大切です。
製紙汚泥と関連する言葉に「ペーパースラッジ(PS)」と「PS灰」があります。それぞれの違いは次のとおりです。
製紙汚泥とPS灰では、含まれる成分や性状が異なるため、利用できる用途も変わります。処理方法や資源化の可能性を検討する際は、汚泥そのものを活用するのか、焼却後の灰を活用するのかを区別して考えましょう。
製紙汚泥の処理では、焼却による減量と熱エネルギーの利用、焼却後に残る灰の再資源化などが行われています。そのほか、汚泥の性状や利用先に応じて、堆肥化・肥料化などを検討することもできます。
製紙工場では、製紙汚泥に含まれる有機物などを燃焼させ、発生した熱を工場内で利用する方法があります。ボイラーで回収した熱を蒸気として活用すれば、紙の乾燥工程などに必要なエネルギーの一部をまかなえます。
ただし、汚泥は水分を多く含むため、含水率が高い状態では燃焼に必要なエネルギーが増え、効率が低下する可能性があります。脱水や乾燥によって水分を減らすことが、燃料利用を検討するうえで重要です。
また、実際に燃料として利用できるかどうかは、汚泥の発熱量や水分、設備の仕様などによって異なります。既存のボイラーを利用する場合も、燃焼条件や排ガス処理設備への影響を確認する必要があります。
ペーパースラッジを焼却した後に残るPS灰は、成分や品質が条件に合えば、セメント原料として利用できます。セメントの製造ではさまざまな原料が使われており、PS灰もその一部を代替する材料として活用されています。
PS灰をセメント原料として利用できれば、最終処分する量を減らし、資源の有効活用につなげられます。ただし、受け入れの可否は灰の成分や品質、セメント工場側の受け入れ条件によって異なります。
そのため、PS灰の再資源化を検討する際は、成分分析や品質の確認に加え、受け入れ先や輸送方法、継続的に搬出できる体制も確認しておきましょう。
PS灰は、成分や構造によって土壌改良材などへの利用が検討されることもあります。土壌の性質を調整する資材として利用する場合は、対象となる土壌や用途に適した性状であるかを確認する必要があります。
ただし、PS灰であれば一律に土壌改良材として使えるわけではありません。成分や有害物質の含有状況、利用する土地の条件などを確認し、用途に応じた安全性を確保することが前提です。実際の利用にあたっては、関係する基準や受け入れ先の要件も確認しましょう。
製紙汚泥に有機物や繊維質が含まれている場合は、堆肥化や肥料化も資源化の選択肢になります。ほかの有機性資源と混合して発酵させる方法などが考えられますが、製紙汚泥の性状によって適した処理方法は異なります。
一方、鉱物成分の割合が高い汚泥では、窒素やリンなどの肥料成分が十分でない場合もあります。その場合は、単独で肥料にするのではなく、ほかの原料と組み合わせて活用できるかを検討する必要があります。
肥料化を進める際は、汚泥の成分や安全性を確認するとともに、製造した堆肥・肥料の品質や利用先を確保することが重要です。地域の農業で利用できるかどうかも含めて、実現性を判断しましょう。
製紙汚泥は、工場内での燃料利用やPS灰の再資源化など、複数の処理方法が検討できる廃棄物です。ただし、燃料利用には汚泥の性状や設備条件が関わり、PS灰のセメント原料化も受け入れ先の品質基準や需要に左右されます。
そこで、汚泥の性状によっては、堆肥化・肥料化を含めて処理方法を比較することも有効です。既存の処理方法を維持しながら、条件に合う資源化ルートを組み合わせることで、処理先の選択肢を広げられる可能性があります。
ただし、肥料化にも、成分や品質の管理、製造設備、利用先の確保などが必要です。処理コストだけでなく、汚泥の性状や製品の需要、運搬費などを踏まえ、自社の工場に合った方法を検討しましょう。
紙パルプ業界では、廃棄物の減量や再資源化が進められています。日本製紙連合会の公表資料によると、2024年度の産業廃棄物の最終処分量は6.1万トンでした。また、2026年度以降の目標として、2030年度までに最終処分量を5万トンに減らす方針が示されています。
同資料では、2024年度の産業廃棄物の有効利用率は98.5%と報告されています。製紙工場から発生する廃棄物の多くは焼却などによって処理され、燃料としての利用や、焼却後に残る灰のセメント原料化などに活用されています。
こうした取り組みを継続するには、既存の処理方法を適切に運用するとともに、汚泥の性状や地域の需要に応じた資源化の方法を検討することが重要です。肥料化を含む新たな用途を検討する場合も、実際の品質や利用先を確認し、継続できる仕組みを整える必要があります。
製紙汚泥は、紙やパルプの製造工程で発生する産業廃棄物です。水分や有機物、鉱物成分などを含み、その性状は原料や製造工程によって異なります。
主な処理方法には、工場内での燃料利用や、焼却後に残るPS灰のセメント原料化などがあります。汚泥の性状によっては、堆肥化・肥料化などの資源化も検討できます。
処理方法を選ぶ際は、汚泥の成分や含水率、設備条件だけでなく、処理コストや再資源化した製品の利用先も確認することが大切です。既存の処理ルートと新たな資源化の方法を比較し、自社の工場で継続的に運用できる仕組みを検討しましょう。