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カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引きゼロにすることです。政府は2050年までにカーボンニュートラルを実現することを目標としており、中でも下水汚泥の肥料化は重要と位置づけています。ここでは、2050年カーボンニュートラルに向けた下水汚泥肥料化の取り組みについて詳しく解説します。
「2050年カーボンニュートラル」は、2020年10月26日に行った、菅元内閣総理大臣の所信表明演説に由来します。「2050 年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち 2050 年カー ボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言したのです。 翌年1月には、「COP26までに、意欲的な2030年目標を表明すること」を宣言。4月の日米首脳共同声明でも、「2030年までに確固たる気候行動を取ること」を全世界に発信しました。
以降、2021年6月に「地域脱炭素ロードマップ」「2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」、同年7月には「国土交通グリーンチャレンジ」など、政府の施策が次々と決定・公表されたのを覚えている人は多いかもしれません。
公表された施策の中には、下水道に関するものも多くありました。その一つが下水処理・汚泥処理の省エネ化推進、下水道バイオマスによる創エネ導入、地域バイオマス集約によるエネルギー拠点化などです。
下水汚泥の処理工程では、非常に多くの二酸化炭素(CO2)や一酸化二窒素(N2O)が排出されます。その一方で、下水汚泥には非常に多くのエネルギーが含まれているため、政府はCO2の排出量2030年までに208トン減らす*とともに、下水汚泥をエネルギー源として利用するさまざまな施策を提案しています。
下水道事業では、2022年度実績で約508万t-CO2の温室効果ガスが排出されています。主な排出源は、処理場の電力消費量が約53%、さらにポンプ場での電力消費と燃料の使用を合わせた場合、全体の約64%となっています。そのほか、水処理工程で排出されるCH4とN2Oや、汚泥を焼却する工程で発生するN2O排出などがあります。
温室効果ガスの排出量には、「Scope1」「Scope2」「Scope3」の3種類の分類があります、これは、温室効果ガス排出量の算定・報告の国際的な基準であるGHGプロトコルによって規定されており、下記のように分類されています。
上記のうち、温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)では「Scope1」と「Scope2」の報告が求められています。温室効果ガスの排出量は、算定する物質ごとに「活動量×排出係数」で算定されます。「活動量」は、電気使用量や重油使用量、処理下水量、焼却汚泥量などが用いられます。また「排出係数」は、活動の1単位あたりから排出される各温室効果ガスの元単位であり、通常は政令・省令で定められた値を用います。
下水道事業では、さまざまな形で地球温暖化対策の取り組みが行われています。例えばN2O排出抑制の取り組みとしては、下水汚泥焼却施設における燃焼高度化や適切な曝気制御などが挙げられます。
「曝気」とは水や排水などに空気を供給し、液中の酸素濃度を増加させる処理操作です。下水処理場では活性汚泥の増殖に必要な酸素を供給して微生物の動きを促し、有機物の分解を効率的に進めます。N2Oは窒素除去において硝酸イオンが窒素ガスに変換される際に排出されることから、曝気方法がN2O発生量と関係しているとされており、適切な曝気制御によるN2Oの発生低減が期待されています。
また環境省は温室効果ガス排出量の算定方法について大幅な見直しを発表しました。改正法令等は令和7年4月1日から施行され、令和7年度報告(令和6年度実績の報告)から適用されています。この見直しにより温室効果ガス排出量の正確な把握につながる、さらに直接排出と間接排出を分けて報告・公表することでそれぞれ目標を立てて排出削減に取り組める点などが期待されています。ただし変更により、従来とは異なる作業・確認が必要となる可能性がある点には注意が必要です。
カーボンニュートラルに向けた下水道施策の一環として、国土交通省は「カーボンニュートラル地域モデル処理場計画」の仕組みを創設しています。これは、終末処理場において省エネ・創エネ・再生可能エネルギー等の技術を集中的に導入し、処理場全体としてエネルギーの自立・最適化を図ることを目的とした計画です。
計画の策定主体は公共下水道や流域下水道の管理者で、登録された処理場は全国展開のショーケースとして機能することが期待されています。
令和4年度には、鳥取県米子市の皆生処理場、富山県富山市の浜黒崎浄化センター、熊本県熊本市の南部浄化センターが登録され、省エネ型設備の導入(汚泥処理施設や水処理施設、汚泥消化設備)などが行われました。令和5年度には新たに広島県広島市の西部水資源再生センター、福岡県福岡市の中部・西部・新西部水処理センター、宮崎県宮崎市の大淀処理場が登録されています。
この計画では、以下のような要件が設けられています。
ここでいう「創出されるエネルギー」には、太陽光発電や下水バイオガスの活用に加え、他のバイオマスとの一体的な利用によって生み出されるエネルギーも含まれます。外部供給や地域利用も想定されており、単一施設の取り組みにとどまらず、地域全体での脱炭素化を視野に入れた構想となっています。汚泥由来のエネルギー(バイオガスや肥料利用を通じたエネルギー削減分)も含まれており、下水汚泥の肥料化も重要な施策の1つです。
| 年度 | 登録処理場名 | 所在地 | 導入技術 | 技術の狙いと効果 |
|---|---|---|---|---|
| 令和4年度 | 皆生処理場 | 米子市 | 超高効率水処理設備 消化ガス発電 |
地域バイオマス受入・エネルギー回収 増加で脱炭素化及び広域化・共同化 |
| 令和4年度 | 浜黒崎浄化センター | 富山市 | 消化ガス発電 | 消化ガス・下水汚泥を活用しCN推進 |
| 令和4年度 | 南部浄化センター | 熊本市 | 太陽光 | 省エネ技術・再エネ設備導入でCN推進 |
| 令和5年度 | 西部水資源再生センター | 広島市 | 消化ガス発電、太陽光 | 省エネ・創エネ技術導入によるCN推進 |
| 令和5年度 | 中部・西部・ 新西部水処理センター |
福岡市 | 消化ガス発電、太陽光 | エネルギー収支改善と地域循環促進 |
| 令和5年度 | 宮崎市水処理場 | 宮崎市 | 消化ガス発電、太陽光 | 省エネ・創エネ設備・地域バイオマス 有効活用によるCN推進 |
| 令和6年度 | 南部浄化センター | 千葉市 | 消化ガス発電、太陽光 | 省エネと創エネを両立し、CN達成加速 |
| 令和6年度 | 高須浄化センター | 高知市 | 太陽光、消化ガス発電 下水熱回収 |
再エネ最大化で 運営エネルギーゼロ化を目指す |
民間活力イノベーション推進下水道事業とは、民間企業の技術力やノウハウ、資金力を活用し、官民一体となって効率的かつ持続可能な運営を実現する取り組みのことです。AIやIoT、ビッグデータを活用した下水道管理システムの導入や、民間のノウハウを活用した運営・維持管理コストの最適化、下水汚泥の資源化などを行っています。
大阪市にある平野下水処理場では、民間企業が汚泥燃料化設備の設計・建設・維持管理(20年間)を担当。炭化燃料化物は、電力会社に販売しています。
東京都芝浦水再生センターは、下水処理場の敷地の借地権(30年間)を民間企業に譲渡し、その対価として商業ビルのオフィス床を取得。オフィス床を貸し付けて長期安定収益を確保しつつ、ビルの空調に下水熱を活用&トイレ洗浄水に再生水を利用しています。
神戸市 垂水処理場では、民間企業に下水処理場の敷地と消化ガスを提供。民間企業は処理場上部の空間にメガソーラーを設置。バイオガスと合わせてダブル発電を行い、年間約1億7千万円の売電収入を得ています。神戸市には、このうち2割を支払っています。
福岡県の御笠川浄化センターでは、老朽化した汚泥溶融施設を汚泥燃料化施設に改築。下水汚泥のエネルギー利用を推進しています。設計・建築から施設の運営まで、DBO方式を採用して民間ノウハウを活用。施設は平成31年度に稼働開始しました。
大分市にある大在水資源再生センターでは、下水汚泥燃料化施設の建設・運営に関してDBO方式を採用。安定した設備の運営とリスク管理、コスト削減を図っています。
2050年カーボンニュートラルに向けて、下水汚泥のポテンシャルを活かしたさまざまな取り組みが行われています。各地域の事例やデータなども参考にしながら、持続可能な汚泥の活用方法について検討してみてください。
当メディアでは汚泥の肥料化に関して中部エコテック監修のもと詳しく解説をしています。ぜひ参考にしてください。
中部エコテック株式会社は、循環型社会の実現を目指す環境ソリューションを提供する企業。汚泥の肥料化やエネルギー化技術をはじめ、有機性廃棄物・産業廃棄物を有効活用に関するサービスを提供しています。高度な技術力と豊富な実績を基に、国土交通省の「B-DASHプロジェクト」に参画し、自治体や地域社会と連携し、持続可能な未来づくりを支援しています。開発したコンポの納入実績は4,000台以上(2024年12月時点)にのぼります。