下水汚泥とB-DASHプロジェクト

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下水道分野で費用・環境負荷が大きい「汚泥」。近年のB-DASHでは、リン回収・肥料化・エネルギー化の3系統が伸長しています。本ページでは、汚泥分野の最新トピックと導入の勘所を、実証 ⇒ 仕様化 ⇒ 実装の流れで整理します。

B-DASHプロジェクトとは?

下水道技術革新で創エネ・省エネを推進するプロジェクト

B-DASHプロジェクトとは、国土交通省が推進する技術開発プロジェクトのことです。新たな技術によって下水道事業における創エネ、省エネ、浸水対策、老朽化対策などを進めることを目指しています。

世界的にエネルギー資源が枯渇する中で、安定したエネルギーを確保するためには低コストで高効率な技術の導入が必要不可欠です。しかし、地方公共団体ではコストや人的リソースが限られており、積極的に取り組むことができません。そこで国が主体となって、実規模レベルの施設・設備を設置して技術的な検証を行い、全国への普及展開を図っています。

B-DASHプロジェクトの概要

B-DASHプロジェクトの流れ

B-DASHプロジェクトは、一般的に以下の流れで進められています。

  1. 技術を公募する
  2. 集まった技術を選定する
  3. 実証実験をする
  4. 性能評価・コスト計算を行い標準化
  5. 各自治体・下水道業者へ普及する
  6. フィードバックを受け、さらに改良する

B-DASHプロジェクトでは、まず国土交通省が民間企業・研究機関・自治体から技術を公募します。集まった技術を学識経験者からなる「下水道革新的技術実証事業評価委員会」が評価し、特に有望な技術を選定。選定された技術を、全国の下水処理場や下水道施設などで実際に確認します。

実証実験の結果が出たら、技術の有効性やコストパフォーマンスを分析。効果が確認された技術については標準化し、全国の自治体・下水道業者に普及しています。 実際に導入された技術の検証も重要なプロセスです。他国への普及も視野に入れ、さらなる改良・最適化を行っています。

余剰汚泥からの高効率MAP(リン)回収

活性汚泥からリンを溶出させ、MAP(リン酸マグネシウムアンモニウム)結晶として回収する技術。返流水のリン負荷低減・スケール抑制に寄与し、既設ラインへの追加でも効果を出しやすいのが特長です。前処理条件、pH・Mg添加、晶析槽の運転管理、回収品の品質・用途(肥料等)を総合設計します。

縦型密閉発酵槽などによる汚泥の肥料化

臭気を抑制しながら短時間で安定化させる密閉発酵・高速発酵乾燥を活用。製品(堆肥・ペレット)の含水率・衛生性・取扱性、搬出・保管、地域の受け皿(農地・緑化等)までを含めた出口設計が鍵です。

消化ガスの高度利用(メタネーション等)

消化ガス発電(コジェネ)に加え、SNG化(メタネーション)・熱電併給・系統連系など高度利用が進展。熱需給バランス、運転安定性、CO₂削減量とLCCの最適点を見極めます。

導入ガイド|B-DASH成果を自施設に落とし込む

評価指標の作り方(LCC・CO₂・資源回収量・運用性)

初期費/更新費/薬剤費/電力・熱費/残渣処分費/副産物収益を入力して比較するLCCテンプレートの利用を推奨。CO₂原単位と回収量(MAP・肥料・SNG等)をKPIに設定し、感度分析で意思決定を支援します。

LCCテンプレートをダウンロード(サンプル)

実証から本実装までのロードマップ

  1. テーマ選定(課題整理・目標KPIの定義)
  2. 実証設計(計測項目・期間・体制・安全計画)
  3. 運転・評価(安定化後データでLCC/CO₂/品質を検証)
  4. 標準化ドキュメント参照・仕様化(性能規定へ変換)
  5. 調達・契約(成果保証・保守SLA・責任分界を明確化)
  6. 本実装・運用最適化(自動制御・ダッシュボード等)

調達・契約のポイント

  • 性能規定中心の仕様書(達成値・試験条件を明記)
  • 成果保証や性能確認試験の方法・判定基準
  • O&M体制(予防保全・消耗品・遠隔監視)の明文化
  • 異常時の責任分界と復旧フロー(臭気・発泡・目詰まり等)

具体的なプロジェクト事例

縦型密閉発酵槽による下水汚泥の肥料化技術に関する実証事業

事業実施者:株式会社クボタ・UBE三菱セメント株式会社・中部エコテック株式会社・島根県・日本下水道事業団共同研究体

下水汚泥の肥料化やエネルギー化に注目が集まる一方、中小規模の下水処理場では、コストや安全性の課題から下水汚泥活用のための設備が導入できていません。この実証事業では、畜糞堆肥化で多くの実績がある縦型密閉発酵技術を下水汚泥に活用。低コストな高速発酵乾燥技術の実証を行い、中小規模の下水処理場でも導入しやすい下水汚泥有効利用技術の構築を目指しています。

縦型密閉発酵槽による下水汚泥の肥料化技術に関する実証事業

事業実施者:月島JFEアクアソリューション株式会社・全国農業協同組合連合会福岡県本部・福岡市共同研究体

下水処理場から効率的にリンを回収するプロセスを確立し、資源の有効活用とライフサイクルコスト(LCC)の削減を図るプロジェクトです。リン濃度の高い余剰汚泥(活性汚泥)からリンを溶出させ、MAP(リン酸マグネシウムアンモニウム)を生成させることで、より効率的にリンを回収する実証試験を行います。従来の半量の汚泥から同量のリンを抽出できるようになれば、リン除去回収装置の建設費、 維持管理費の縮減にも貢献できるとしています。

下水汚泥焼却灰の低コスト肥料化技術に関する調査事業

事業実施者:三機工業株式会社・秋田県・東京都下水道局共同研究体

下水汚泥の肥料化で課題とされている重金属に着目した実証事業です。焼却炉の高温集じんや水洗浄などを活用し、簡便な方法で焼却灰の重金属を削減。下水の焼却過程で生成される焼却灰を利用するため容易に調達が行えます。また、コストを抑えた肥料化により、肥料原料としての価値向上にも貢献することができます。

AIを活用した下水処理場運転操作の先進的支援技術に関する実証事業

事業実施者:株式会社明電舎・株式会社NJS・広島市・船橋市共同研究体

熟練の技術者が行ってきた下水処理場の運転技術をAI化することで、人口減少に伴う熟練技術者の減少、技術の継承といった課題解決を目指す実証事業です。

画像処理AI、対応判断AI、運転操作AI、水質予測AIという4つのAIが連動して運転ガイダンスを行って判断根拠を見える化。AIを用いた処理水質の安定化により、維持管理コストの低減効果などを実証するとしています。

制度・年次情報の読み方

年度ごとの採択テーマの傾向

近年は「資源回収(MAP・肥料化)」「省エネ・脱炭素(高効率化・ガス高度利用)」「デジタル化(運転最適化・DX)」が三本柱。自施設の課題と重なるテーマを優先的に深掘りします。

他制度との関係

B-DASHの成果を根拠に仕様化し、更新・省エネ・再エネ等の別制度で整備へ—この「B-DASH成果を根拠に仕様化 ⇒ 別制度で整備」の組み合わせも有効です。

B-DASHプロジェクトの成果と展望

2011年に創設されて以来、B-DASHプロジェクト(下水道革新的技術実証事業)では45件の技術が採択(2022年時点)され、24編の技術導入ガイドラインが公表*されました。開発・実証されたさまざまな技術によって、以前よりエネルギー効率に優れた技術が普及し、全国的な下水道施設の性能向上が図られています。

一方で、技術の普及促進にはまだ課題があります。点検・診断技術は導入しやすい一方、水処理全般に関わる高度化技術は導入時期が難しく、普及に時間がかかるとみられています。今後は、引き続き国土交通省と連携してガイドラインの普及啓発を行うとともに、ニーズに合わせて技術を選択しやすいよう、情報発信を行っていくことも求められています。

Rebodei編集チームより
B-DASHプロジェクトと汚泥の肥料化—未来の下水道技術へ

B-DASHプロジェクトは、国土交通省が推進する下水道技術革新のための実証事業です。下水処理における創エネ・省エネを進めるだけでなく、浸水対策や老朽化対策にも貢献するこの取り組みは、持続可能な社会を目指す上で欠かせないプロジェクトとなっています。

その中でも、下水汚泥の肥料化技術は、従来の焼却・埋め立て処理に代わり、リンや窒素を有効活用することで、肥料の安定供給と資源循環を両立する新たなアプローチです。実証事業では、縦型密閉発酵槽を活用した低コストな高速発酵乾燥技術が採択され、中小規模の下水処理場でも導入しやすいモデルの構築が進められています。

この取り組みには、汚泥の肥料化技術の専門家である中部エコテック株式会社も参画しており、B-DASHプロジェクトの一環としてその技術が採用されています。同社の監修のもと、本メディアでは新しい汚泥の肥料化技術や導入のポイントについて詳しく解説しています。

国の支援を活用しながら、新たな技術の普及を推進し、持続可能な下水道インフラの実現に向けて、私たちも前向きに取り組んでいきましょう。

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メディア監修
中部エコテック株式会社

中部エコテック株式会社は、循環型社会の実現を目指す環境ソリューションを提供する企業。汚泥の肥料化やエネルギー化技術をはじめ、有機性廃棄物・産業廃棄物を有効活用に関するサービスを提供しています。高度な技術力と豊富な実績を基に、国土交通省の「B-DASHプロジェクト」に参画し、自治体や地域社会と連携し、持続可能な未来づくりを支援しています。開発したコンポの納入実績は4,000台以上(2024年12月時点)にのぼります。

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