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近年、さまざまなポテンシャルを秘めた下水汚泥に注目が集まっています。ここではなぜ下水汚泥が注目されるのか、ポイントを押さえて解説します。
下水汚泥は、下水処理の過程で発生する産業廃棄物の一種です。従来、下水汚泥の多くが焼却や埋め立てなどによって処分されていましたが、焼却する際に多くのCO2が排出される・埋め立て処分地が足りなくなるなど、さまざまな問題を抱えています。
一方、下水汚泥には植物に有益な窒素やリン酸などの栄養分が豊富に含まれています。化学肥料原料の多くを輸入で賄う日本にとって、下水汚泥は貴重な国内資源。こうした状況を受けて、汚泥からリンや窒素などを回収・再利用する技術が注目されているのです。
下水汚泥由来の肥料成分は、同じ製品でも「乾物あたり(乾物換算)」か「現物あたり(現物換算)」かで見え方が変わります。 とくに脱水汚泥は水分が多いことがあるため、成分値を比較するときはどちらの基準かを先にそろえることが大切です。
肥料の主成分は、窒素(N)、りん酸(P2O5)、加里(K2O)という形で示されるのが一般的です。 下水汚泥肥料でも、主成分としてまずこの3つの値を確認すると、他の肥料や土づくり資材と比較しやすくなります。
水分量が異なる原料・製品同士を比べるときは、乾物換算のほうが差を把握しやすくなります。 たとえば全国調査でも、脱水汚泥等の肥料成分は乾物換算で整理され、季節差も含めた分布として示されています。
下水汚泥から肥料成分を回収する方法には、主に「コンポスト化」と「リン回収」の2つの種類があります。
「コンポスト化」とは、機械脱水を行って水分を減らし、微生物の力で汚泥中の有機物を分解する方法です。発酵の過程で高温化して病原菌・寄生虫・悪臭が除去される上、発酵を進めることで、安定した有機肥料(コンポスト)にすることができます。
リン回収には、MAP法やHAP法、焼却灰を使った方法などがあります。MAP法とは、マグネシウムと反応させたリンを結晶化して回収する方法です。焼却灰を使った方法では、下水汚泥を焼却し、その灰からリンを回収します。回収したリンは、肥料・工業用途(化学製品・洗剤)として利用することが可能です。
下水汚泥からリンや窒素などを回収するメリットは、主に以下の通りです。
前述のように、日本ではこれまで下水汚泥の多くを埋め立てや焼却などによって処分してきました。しかし成分回収を行うことで、焼却・埋立処理にかかる高額な費用負担を軽減することができます。
また、日本ではリンを輸入に頼っていますが、そもそもリンは限られた地域でしか産出されない上、埋蔵量が限られています。成分回収ができれば、国際的な価格高騰の影響を受けることなくリンを確保することができるでしょう。
回収したリンは、農業用肥料として再利用することが可能。実際に、全国各地の農業地域で汚泥肥料の活用が行われています。
現在、肥料原料は大半を輸入に依存している状況ですが、2021年以降輸入価格が上昇傾向にあります。この点から、農林水産省及び国土交通省では「下水汚泥資源の肥料利用の拡大に向けた官民検討会」を開催しています。この検討会では、自治体における取組事例や関係団体から寄せられた意見を踏まえつつ、下水汚泥資源における肥料利用の拡大に向けての課題や取組の方向性について取りまとめを行っています。
その結果、国際的資源価格高騰への対策と輸入依存からの脱却を目的として、2030年までに堆肥や下水汚泥資源の利用を拡大する旨が示されています。具体的な目標については、「食料安全保障強化政策大綱」(令和4年12月27日 食料安定供給・農林水産業基盤強化本部決定)において、2030年までに下水汚泥資源・堆肥の肥料利用量を倍増。肥料使用量(リンベース)に占める国内資源の利用割合を25%から40%にするという目標が示されています。
下水汚泥由来の肥料は、窒素やリン酸などの栄養分を含みます。ただし、含有量は処理方式や流入水の状況、季節などで変わることがあるため、成分は一定ではない点を押さえておくことが大切です。
下水汚泥の成分は、処理場ごとの運転条件や原料の違いに影響を受けます。同じ分類の汚泥肥料でも、製品ごとに成分が異なる場合があるため、検討の際は銘柄ごとの分析結果を確認するのが基本になります。
成分表や分析結果は、現物ベースと乾物ベースのどちらで示されているかが異なることがあります。たとえば水分が多い製品は、現物ベースの数値が低く見えやすくなります。
比較や施用設計を行う場合は、同じ基準で見直してから判断することが欠かせません。分からないときは、製造者が提示する成分表の読み方を確認しておくと安心です。
汚泥肥料の成分を検討するときは、主要成分の量だけでなく、成分の形態やばらつきも含めて確認することで、用途に合った選び方につながります。
リン酸は水に溶けやすい形態だけでなく、くえん酸に溶ける成分として扱われる形態が示されることがあります。形態が異なると効き方の出方が変わる場合があるため、作物や土壌条件に合わせて読み取ることが大切です。
成分は原料や製造条件で変わることがあるため、ロットごとの管理方法や分析頻度を確認しておくと、実際の運用で迷いにくくなります。施用量は土壌診断や作付け計画と合わせて考え、過剰施用にならないよう調整します。
下水汚泥肥料は栄養分を含む一方で、重金属等が混入する可能性があるため、制度上の基準と分析値の確認が前提になります。 ここでは、どの項目をどう見ればよいかを、基準値と調査結果の読み方に絞って整理します。
汚泥肥料中の有害成分(重金属)として、 砒素(As)、カドミウム(Cd)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、水銀(Hg)、鉛(Pb)の6項目が示され、 含有を許される最大量(mg/kg)も併記されています。 成分表・分析結果を受け取ったら、まずこの6項目が基準内かを確認すると判断が早くなります。
重金属は、たまたま1回の分析で基準内だったとしても、原料や受入条件が変われば増減する可能性があります。 汚泥肥料中の重金属管理の考え方として、管理計画の策定、点検、改善を繰り返す(PDCA)形での継続管理を示しています。 導入・利用を検討する側も、「分析頻度」「異常時の対応」「原料の管理」など、運用面の確認まで行うと安心につながります。
下水汚泥は植物の成長に欠かせない栄養分を多く含む一方、鉛やカドミウムや水銀などの重金属・有害物質が混入している場合があります。これらの重金属や有害物質が含まれていると、土壌や作物、作物を食べる人間にも被害が生じる場合があるので注意が必要です。
ただし、MAP法やHAP法なら、重金属の含有量を抑えたリンを回収することが可能です。また農林水産省では、汚泥肥料の中に含まれる有害重金属の基準を設定し、これに沿った肥料化を求めています。基準を超える濃度の肥料は販売することができません。
汚泥肥料の生産業者においては、全ての製品において重金属の許容量を下回るように生産することが求められています。農林水産省が定める重金属の許容量は、例えばカドミウム(Cd)が5mg/kg、水銀(Hg)が2mg/kg、鉛(Pb)が100mg/kgと定められており、これらを下回ることが求められています。
現在、汚泥からリンを取り出す方法としてはMAP法やHAP法と呼ばれる技術が用いられています。「MAP法」とは、排水中からリンを除去する方法のひとつです。排水中のリン酸をマグネシウムとアンモニウムと反応させ、リン酸マグネシウムアンモニウム結晶を生成させて除去する方法です。リン酸マグネシウムアンモニウム結晶は特定の条件で選択的に沈殿するために重金属類が共沈しにくくなります。
また、「HAP法」とは、排水中のリン酸をカルシウムと反応させ、ハイドロキシアパタイトの結晶物として回収することを目的とした方法です。HAPは重金属イオンを吸着・補足する能力が高く、重金属が水に再度溶出することを防いでいます。