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自治体のし尿処理施設や、住宅・店舗などの浄化槽から発生する「し尿」と「浄化槽汚泥」。下水道が整備されていない地域の生活を支える重要な処理対象ですが、汚泥の性状や発生量にはばらつきがあるため、処理や資源化では地域や施設に合わせた工夫が求められます。
この記事では、し尿と浄化槽汚泥の違いから収集・処理の流れ、代表的な処理方法までわかりやすく解説します。
し尿汚泥とは、し尿や浄化槽汚泥を処理する過程で発生する汚泥のことです。し尿や浄化槽汚泥には有機物や窒素、リンなどが含まれており、適切に処理したうえで資源として活用できる場合もあります。
下水道が整備されていない地域では、くみ取り式トイレのし尿や浄化槽にたまった汚泥を、自治体の許可を受けた業者などが収集します。収集したし尿・浄化槽汚泥は、し尿処理施設などで処理され、脱水や乾燥、焼却、堆肥化などを経て処分・資源化されます。
地域によって収集・処理の体制や採用されている処理方法は異なるため、汚泥の性状や発生量、最終的な利用先などを踏まえて、適した処理方法を検討することが重要です。
「し尿」と「浄化槽汚泥」は、どちらも生活に伴って発生する処理対象ですが、発生する場所や性状が異なります。
実務上は「し尿・浄化槽汚泥」とまとめて扱われることもありますが、性状や含水率などには違いがあります。そのため、処理設備の設計や運転では、それぞれの特性を考慮することが重要です。
し尿・浄化槽汚泥と下水汚泥は、どちらも生活に伴って発生する汚泥ですが、発生する場所と処理の仕組みが異なります。
下水汚泥は、下水道を通じて下水処理場に集められた汚水を処理する過程で発生します。一方、し尿・浄化槽汚泥は、くみ取り式トイレや浄化槽から収集され、し尿処理施設などで処理されます。
どちらも有機物や窒素、リンなどを含むため、堆肥化や肥料化などの資源化が検討されています。ただし、汚泥の性状や処理方法は異なるため、資源化する場合も対象となる汚泥に合わせた処理が必要です。
し尿・浄化槽汚泥は、下水道に接続していない住宅や事業所などから発生します。主な発生源は次のとおりです。
環境省の資料によると、令和6年度末時点で全国の浄化槽設置基数は約743万基で、そのうち合併処理浄化槽は約414万基です。浄化槽は下水道が整備されていない地域を中心に利用されており、生活排水を処理する設備として重要な役割を担っています。
し尿・浄化槽汚泥は、収集・運搬された後、し尿処理施設などで処理されます。一般的な処理の流れを見ていきましょう。
くみ取り式トイレのし尿や浄化槽汚泥は、バキューム車などで収集されます。浄化槽の清掃や汚泥の引き抜きは、地域のルールに基づいて実施され、収集したし尿・浄化槽汚泥はし尿処理施設などへ運ばれます。
自治体や地域によって収集・運搬の体制は異なります。運搬距離が長い地域では、中継施設などを活用して効率的に搬送するケースもあります。
し尿処理施設では、受け入れたし尿・浄化槽汚泥の性状に合わせてさまざまな処理が行われます。代表的な工程は次のとおりです。
施設によって採用される処理方式や工程は異なります。近年では、単に汚泥を処分するだけでなく、資源として有効活用する「汚泥再生処理センター」の整備も進められています。
環境省では、し尿・浄化槽汚泥などを処理するとともに、資源化を行う汚泥再生処理センターの整備を支援しています。施設によって、堆肥化やメタン発酵などの資源化設備が導入されています。
し尿・浄化槽汚泥の処理には、焼却や脱水、堆肥化・肥料化、メタン発酵などの方法があります。ここでは代表的な4つの方法を紹介します。
脱水した汚泥を焼却炉で燃焼し、汚泥の量を減らす方法が焼却処理です。有機物などを分解でき、汚泥を大幅に減量できることがメリットです。
一方で、焼却には燃料や電力などのエネルギーが必要です。また、焼却によって発生する二酸化炭素や焼却灰への対応も必要になります。そのため、近年では焼却だけに頼らず、資源化と組み合わせた処理方法が検討されています。
脱水処理は、汚泥から水分を取り除き、重量や体積を減らす工程です。し尿処理施設では、遠心脱水機やスクリュープレス脱水機、ベルトプレス脱水機などが使われています。
脱水には、汚泥の性状に合わせた凝集剤の選定や運転条件の調整が重要です。脱水後の汚泥は「脱水ケーキ」と呼ばれ、焼却や堆肥化など次の処理工程へ移しやすくなります。
含水率をどこまで下げられるかは、後工程の処理費用や運搬費にも関係するため、処理全体のコストを考えるうえでも重要な工程です。
し尿・浄化槽汚泥には、有機物や窒素、リンなどが含まれているため、適切な処理を行ったうえで堆肥や肥料として資源化できる場合があります。
堆肥化では、脱水した汚泥などに木質チップやもみ殻などを混ぜ、微生物の働きを利用して発酵させます。水分や温度、通気などを適切に管理することで、農業や緑地などで利用できる資源として活用します。
ただし、汚泥を肥料として利用するには、含まれる成分や有害物質などを確認し、関係する法令や基準に沿って適切に処理・管理することが必要です。
メタン発酵は、酸素のない環境で微生物に有機物を分解させ、メタンを含むバイオガスを発生させる方法です。発生したバイオガスは、発電や熱利用などに活用できます。
汚泥の減量とエネルギー回収を同時に行えることがメリットですが、導入には設備や運転管理のための体制が必要です。汚泥の性状や処理量、エネルギー需要などを踏まえて、導入効果を検討する必要があります。
し尿・浄化槽汚泥の処理では、汚泥を焼却して減量する方法だけでなく、汚泥に含まれる有機物や窒素、リンなどを生かして、肥料として利用する方法もあります。肥料化した汚泥は、農地や緑地などで利用可能。汚泥を処理して廃棄するのではなく、植物の生育に必要な成分を含んだ肥料として、別の用途につなげられます。
また、肥料として利用できる汚泥を焼却せずに活用できれば、処理した汚泥を廃棄する量そのものを減らせます。焼却する汚泥が減れば焼却灰も少なくなり、最終的に埋立処分する量を抑えることにもつながります。
し尿・浄化槽汚泥は、下水道が整備されていない地域の生活を支える重要な処理対象です。収集・運搬された後、し尿処理施設などで脱水や生物処理、焼却、堆肥化などの処理が行われます。
処理方法には、焼却や脱水だけでなく、堆肥化・肥料化やメタン発酵による資源化もあります。なかでも肥料化は、汚泥に含まれる有機物や窒素、リンなどを生かし、処分するだけだった汚泥を肥料として地域に還元できる方法です。
ただし、肥料化には汚泥の性状や成分、処理コスト、利用先などを踏まえた検討が必要です。地域や施設の条件に合った処理方法を選び、汚泥を継続的に資源として活用できる仕組みを整えることが重要です。